18年間メンテナンスなしでの症状
床暖房が効かない部屋があるので、見てほしいとのご依頼です。
床暖房は、基本は単純なシステム
床暖房のしくみをざっくり説明すれば、床仕上げ材の下に敷いてあるパイプに温水を回して、足元ポカポカ暖房を行うものです。
暖房配管にかんして言うと、パネルヒーターを使用する場合は単に送って還ってくる配管をすれば、一応は機能します。
また、燃焼機器であるボイラーも床暖房だけという条件であれば、「半密閉ボイラー」で良いので、不凍液の補充も、お客様で行うことができます。(交換は業者へ)
単純=安価というのが世の常であるのであれば、もう少し普及してもよさそうですが、いまいち広がらない理由として、一度敷設してしまうと、部屋の模様替えが難しいのと、床を伴うリフォームができないというのがあるのではないかと思われます。 なにせ、床にビスを打とうものなら、温水が噴出してきますから。
それでも、足元が暖かく安全というのは、暖房としては「最強」です。
介護施設や保育施設では、当たり前の設備。というのが物語っています。
今回のご依頼は、一部の部屋の床暖房が効かないというものです。 これには、温度制御する部品が絡んできます。
床暖房は電気制御のかたまり
ボイラーで熱した温水をただただグルグル回すのであれば、制御部品がなく、単純明快なシステムでOKです。
ただ、この部屋は高めに、この部屋は低めに、といった部屋別に温度設定を変えたいという場合は、一気に複雑になります。
上の写真は、ご依頼されたお客様邸の天井内にありました、行き帰りヘッダーです。
各部屋へ向かっている配管の上には、温水の流れを調整する「熱動弁」が並んでいます。
部屋の温度を低くする→流れる不凍液の量を減らす。
部屋の温度を高くする→流れる不凍液の量を増やす。
という制御をしなければいけませんので、温度設定したい部屋ごとに 写真のような「熱動弁」が必要になります。
この熱動弁。 自ら流れる温水の温度を感知して、弁を開けたり閉じたりします。 これには、100V電源が必要です。
また写真に写っているのは部品の一部で、実は 天井内には他の付属部品がごそっと塊であります。
それほど、温度制御というのは、機械的にも難しいのですね。
暖かくならない部屋がある場合は、熱動弁とヘッダーチェック
他の部屋は正常なのに、一部の部屋が効かないというのは、まず、この熱動弁を疑います。 つまり、部品の故障。
ON-OFF制御だけなのでなかなか故障しませんが、可能性がありますので、確認する必要があります。
次に、ヘッダー側の芯棒の固着。 写真のように、温水の流れは、丸で囲まれた「芯棒」が上下して調整します。この芯棒が固着すると
開いたまま または 閉じたまま という状態になり、正常に温水が流れません。 おそらく、これが一番多い原因ではないかと思います。
今回のお客様邸も芯棒の固着。 ヘッダーの芯棒部の交換で復旧しました。
芯棒の固着の原因。 それは、長期間にわたりメンテナンスされてないからです。
床暖房のメンテナンスは、ボイラー本体のメンテナンスももちろんなんですが、ヘッダー回りのメンテナンスも欠かせません。
今回のお客様邸も、今まで使われてなかった部屋が長期間温水が回っていませんでした。3年4年であれば、固着しませんが、10年を超えればさずがに固まってしまっても不思議ではありません。
床暖房場合、さらに半密閉ボイラーであれば、不凍液は4年で取替え
18年使っているボイラーでしたので、これを機に新しいボイラーに取替えました。
床暖房だけのシステムであれば、通常は 半密閉ボイラーを設置しているはずです。
であれば、不凍液の交換は4年くらいが目安。
その不凍液交換時に、床暖房を制御している熱動弁の動作確認も一緒に行います。
(注意:当社の場合)
不凍液が不良化し(=酸化)固形物が発生すれば、その固形物が今度は暖房配管のなかをグルグル循環することになります。
また、今回のように、長期間暖房を使ってない部屋で温水循環が止まっていれば、 温泉の湯の華のように固定物で芯棒が固着しますので、不凍液の定期的な交換が大変大切になります。
▷ 今回取り替えた暖房ボイラー
→ 床暖房・パネルヒーター 不凍液交換時期について